森泉敏彦は箱根新道で前を行くオートバイが風間岳夫だと気が付いた、いつもと違うのんびりした走りの風間岳夫の後ろに敏彦はピタリと付いた、岳夫の前に単気筒のエンジンから、左右にマフラーが出ている250ccが走っていた、岳夫はその250の走りを観察しながら走っていた。後ろに敏彦がいることはバックミラーで知っていた、暫く三台は安全運転を続け、箱根峠のパーキングに入った。250のライダーは青井那美だった。
岳夫 「那美もバイクの免許をとったんだよ、今日がお初」
敏彦 「そいつはスゲーや、一緒にツーリングかぁ」
那美 「どうかしら私の走りは、きついカーブは怖かったわ」
岳夫 「初めはみんなそんなもんだよ、最初から上手いヤツなんていねーよ、怖がる事が大事なんだ」
敏彦 「下りはどこを通るのよ、下りの方が怖いぜ、右手も疲れるしよ、気を付けな」
岳夫 「下りはブレーキやらアクセルやら右手は忙しいからな、椿ラインを下るか、湯河原でチャーシューワンタンメンでも食うか」
敏彦 「賛成賛成、久し振りにあのチャーシューワンタンメン食いてーな、湯河原へ降りようぜ」
三台は大観山で写真を撮り、椿ラインを湯河原へ降りて、駅前のラーメン屋に入った。
敏彦 「なんでバイクに乗りたくなったんだい」
那美 「大瀬崎で走り出したオートバイの動きと音が気に入ったの、アレに乗りたいって思ったの」
岳夫 「そーなんだよ、あれ以来オートバイに夢中さ、今の250で練習して大型をとって俺たちと同じ四気筒に乗るんだとよ」
敏彦 「そりゃスゲー、でも大型は取り回しとかあんからな、あんな重てーバイク起こせねーぞ」
那美 「私こー見えても元柔道部なの、力は少しだけど自信があるんだ」
敏彦 「まーコツさえ掴めば力じゃねーよ、コツだよコツ、柔道で投げるのと同じじゃねーか」