山の色が動き始める季節、針葉樹の濃い緑と、顔を出したばかりの若葉が作る頼りない緑色が混ざり合い、この季節独特の景色を作り出している、疎らに配置された白や淡い桃色は桜だろうか、夏の先端に触れた空気は薄い霞となり、山肌の色をぼかしてぼんやりとした景色を映していた、四十四年前に発売されたオートバイに乗って、そんな景色の県道を走っていた、流れる景色はその頃と殆ど変らない、オートバイの排気音もそのままだ、変ったものといえば、ヘルメットの中の髪が白くなって少なくなった事くらいだ、中身はハンドルを握ると昔のままだ。

イメージ 1

 気が向くままに前輪を向ける、やがて道は細い林道になる、細い峠道を越え一つ南側の県道へ出た。

イメージ 2

 心が若返る乗り物、俺にはオートバイが必要だ

イメージ 3

おわり