この物語はフィクションです。 実在の人物、団体などには一切関係ありません、画像はイメージです。
オープニング
5月の最初の日曜日、康之は爽やかな風の中に、2気筒350の軽快な排気音を響かせていた。
強い陽射しが左斜め前から照り付け、メッキしてある部品のあちらこちらに輝きの粒を創り、その粒がキラキラ眩しかった、日陰に入ると輝きの粒は消え、その先の明るい場所で待っていたかの様に一斉に光りだす。バイクの右に有る影は長さを変えながら同じ速度で着いて来る、影を振り切ろうとアクセルを開けても影が離れることは無い、カーブを曲る度に影は前に後に位置を変えた。
親戚の家まで荷物を届けて欲しいと母親に頼まれ、康之は350で走っていた。
親戚の家の近くのS字カーブに入ったとき、大型ダンプがセンターラインを超えて走ってきた、右に倒してカーブに入っていった康之の進路をそのダンプカーは塞いだ、咄嗟に左に切り返しダンプカーとガードレールの間をすり抜けようとした時、バイクに気が付いたダンプカーは左にハンドルを切り、康之はダンプカーにはぶつからずに済んだが、左側のガードレールに擦るようにぶつかったバイクのハンドルは、左に曲り放り出されるように康之は道路中央に飛ばされた。
ダンプカーは走り去り、倒れたCBのタンクキャップからガソリンが零れていた、立ち上がろうとするが左足に力が入らずやっとバイクのところまで這って来た。
事故に気が付いた近くにある製材所の従業員がやってきて、バイクを起こしガードレールに立てかけ「大丈夫か」と康之に声を掛けた、足の状態が良くない事は直ぐに分かった、救急車を呼んで病院に運ぶより自分の車で運んだ方が早いと判断したその従業員は、康之を自分の車で病院へ運んでくれた。
つづく