尾花の穂が銀色にひかり、富士の裾野に広がっていた、それ程離れていない場所で砲撃の音がした、広場には戦車が並んでいた。
東富士演習場の中を貫く広いダートを走り、沖野は自衛隊の演習を見ていた、砲撃の大きな音は空気の振動を体に感じさせた。見ていると追い払われることが殆どだが、その日は見ていても文句は言われなかった。普段聞く事が無い大音量は気持ちが良かった。
ダートを十里木に向かい、十里木から白糸の滝を通り越し、人穴から開拓道路へ入った、森の中の閉鎖的な部分を抜けると朝霧高原の牧場の中に出る、右に富士山を見ながら走ると、青木ヶ原の樹海に入る、開拓道路は信号が一つ有るだけで、平日は交通量が少ない沖野のお気に入りの道だ、樹海に入る前の駐車帯からは本栖湖が見え、西の空が紅くなり始めていた。

国道139号の消防署の派出所がある交差点で、沖野は考えた。西湖に行く予定だったが今からでは暗くなって良い写真は撮れない、だが写真は諦めても西湖の周りを走りたかった。
つづく