伊勢原CB

Yahooブログから引っ越しました、「あの頃の未来」伊勢原CBです、Yブログで知り合った方が訪問の際には、メッセージで貴殿のURL等をご連絡いただけますと幸いです。

    2011年05月

     そのまま二台は並んで走り、次の赤信号で止まった。
     
     「暑いわ、このまま走りましょう」
     
     「それじゃあこのままご案内します」
     
     西田佳子は汗を掻いていた、赤信号で止まっている間も、ペットボトルのエビアンを何度も飲んでいた。
     
     赤いオートバイはライダーに当たる風が少なく、ライダーの疲労軽減に役立つポジションだが、速度の出ない峠道は裏腹に暑いらしい。
     沖野が乗る旧いオートバイは、体全体に風を受け、夏場は最高のポジションだが高速は疲れる。
     
     吉田に入る手前を左に曲り、有料道路の側道を走り、日の射さない直線の道を登り、五合目まで行く有料道路に平行して走る、アスファルト舗装された林道に入った。林道は、カラマツの植林帯を走り、幅は少ないが良いワインディングだった。
     
     有料道路を潜り、次の交差点を左に行くと、深い森の中を直線に八百メートル続く、軽い左カーブの先はまた長い直線だ、針葉樹が香る空気は心地良かった、速度を上げて二台のオートバイは走り抜けた。
     
     木立に阻まれた日光が、木の葉の隙を狙って射しこみ、深い森に揺れていた、黄色や白の小さな花が群生していた。
     
     暫く走ると辺りが明るくなり空気が変った、青木ヶ原樹海上部の高台だ、明るくなった左カーブの先は、樹木が無く、朝霧高原を見下ろす景色の良いところだった。
     
     景色の良い場所に沖野はバイクを停めた、西田佳子はヘルメットのシールドを開け、いきなり開けた景色に見入っていた。
     
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    つづく

     
     四気筒のオートバイをガレージから押し出し、ガソリンコックをONに捻り、チョークを閉め、力いっぱいキックペダルを踏み下ろす、四回踏み下ろしてからイグニッションスイッチをONに回し、軽くアクセルを開けながら力いっぱいキックペダルを踏み下ろすと、勢い良くエンジンはかかった。
     
     アイドリングが安定するまで、徐々にチョークを開け、アクセルを捻り、二千回転をキープする、エンジンが温まると千四百辺りでアイドリングは安定した。
     
     国産の革で出来たライダーパンツと薄手のシングルジャケットを身に着け、顎紐のDリングを締め、夏用のグラブに指を通し、オートバイに跨ると、キルスイッチをONに回し、セルモーターで四気筒のエンジンをかけた。
     ブーツのベルクロを締めなおすと、一速にギヤを入れ、後方を確認して、沖野は約束の場所へと走り出した。
     

     篭坂峠は霧に包まれていた、天気の良くなる日の早朝は霧がかかることが多い、走りなれた峠道だが沖野は、頂上手前のきつい左カーブは好きになれないカーブだった、若い頃サイドスタンドが引っ掛り転倒しそうになった事が、トラウマになっていた。
     
     篭坂を下り正面に湖が見える、T字型の交差点を左に曲り、その先のファミリーレストラン前の駐車場が、待ち合わせ場所だった。
     
     良い具合に霧のかかった湖は幻想的だった、エレキモーターの音が霧の中から聞こえてくる、ラージマウスバス狙いのアングラーがポイントを目指しているんだろう、岸際でランカーがモーニングライズを繰り返していた。
     
     約束の時間はまだ先だ、沖野は霧が晴れはじめた山中湖を時計回りに一周しようと走り出した、長池を走るときバックミラーに富士山が映った。
     
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     平野で富士山の写真を撮り、時計を見ると、丁度良い時間だなと思った、更に湖を半周して、篭坂からのT字路が見えた。
     
     篭坂からの交差点を左に曲る赤いオートバイが見えた、沖野は信号が青になるとフルスロットルで追いかけた、約束の駐車場の手前で追いつき、右に並んだ。
     
     
    つづく

     沖野がやっている、インターネットのブログ「風は佇まない」に書き込みが有ったのは、西伊豆でガス欠になった一週間あとだった。
     
     「こんにちは、赤いフルフェイスです、トンネルを抜けて暫くしたら居なくなったので、どうしたのかチョット心配していました、あそこでガス欠じゃ大変でしたね。」 内緒で入ったコメントにはそんな事が書いてあった。
     
     沖野は伊豆での出来事を、ブログの記事に面白く書いていた、それ程訪問者があるブログではないが、何人かのブロガーとコメントのやり取りはしていた。 その記事を見た、赤いオートバイの女性ライダーから、書き込みが有ったのだ。
     
     「先日は失礼しました、魅力的な女性ライダーを見かけて、ストーカーしてしまいました、またお会いする機会が有りましたら、その時はお詫びにコーヒーでも。」 沖野は返事のコメントに書いた。
     
     
     
     梅雨が空けこれ以上無い夏空が続いた夜、沖野のブログに赤いフルフェイスからまた書き込みが有った。
     
     「暑くてたまらないので、涼しいところに走りに行きたいです、良い場所をご存知ですか?」
     
     「今の時期に涼しいツーリングなら、山の中の木立に囲まれた道がお勧めです、朝の早いうちに幹線道路を走り抜けて、太陽が高くなる前に山の中に入る、太陽が西に傾いたら山から出てくる、いくつか良い場所は知っています、どちらにお住まいですか?」 沖野は返事を書いた。
     
     「私は横浜の西の端に住んでるの、今度の火曜日はお休みなので、その日に行こうと思っているの、どこが良いかしら?」 
     
     「横浜の西からだと、箱根なども良いですが、人の居ない場所がお好みなら富士山の林道がお勧めかな」
     
     「富士山の林道ですか、行った事が無いので全然分からないです」
     
     「それなら今度の火曜日、ご案内します、山中湖で待ち合わせましょう」
     
     沖野は、携帯電話の番号とフルネームを書いて返信した。
     
     赤いフルフェイスからもフルネームの入った「宜しくお願いします」と言うコメントが来た。 赤いフルフェイスは、西田佳子という名前だった。
     
     
    つづく

     
     梅雨が明け、暑い日が続きうんざりしていた、朝早いというのに、セパレートの革のライダースーツの内側は、汗で濡れ始めた、赤いオートバイのエンジンをセルモーターでかけ、暖気もそこそこに赤いヘルメットを被り顎紐を締め、パンチングレザーのグラブをはめると、すぐさま発進した。
     
     
     あまりの暑さにジャケットのジッパーを、胸の膨らみの真ん中まで下ろし、胸元に風を入れながら走った。
     
     低い太陽の陽射しが背中に当り、自分の影を踏みながら走るのは、良い気分では無かった、バックミラーは、眩しく太陽を時々写した。
     
     西田佳子は約束の山中湖へ向かって、赤いオートバイで国道246を西に走った。
     
    つづく
     
    待望?の新作!
     
    風は佇まない(続、風が吹いてきた)
     
     
     
     

     
    今日、箱根の72ミィーティングに知り合いがお出掛け。
     
    ここを見ると年式が分かる様です
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    ふ~んて聞いてたけど、マニアは良く知ってるな~
     
    この車両のオーナーは、以前ライラックに乗ってきた方です。

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