日が暮れた真っ暗な山伏峠を、2台の30年以上も前に製造された旧いオートバイが、役に立たない前照灯を頼りに名栗に向かっていた、1台は2気筒500cc、もう一台もピストンは2つだが排気量は半分ほどだ、500ccのライダーはその峠は走りなれた地元の、名栗妾多夫だ。

もう一台のライダー伊勢原五郎はその日の朝この峠を名栗から秩父に向かって走っていた。
伊勢原五郎が秩父に行くのは、その日が2度目だった、前回、秩父に来たのは自分が乗るCB500の仲間が集まる事をインターネットのブログで知り、暑い夏の盛りに秩父にやって来た、その時「秩父」が気に入った。
11月の13日、秩父にオートバイ好きが集まることをインターネットのブログで知り、夜明けの宮ヶ瀬、高尾、日の出、青梅、名栗、そして山伏峠を越え秩父にやって来た。時間より早めに着いた集合場所「道の駅ちちぶ」にはすでに10台ほどのオートバイが集まっていた。

集合時間になるとオートバイが32台も集まった、信州俳諧~ず単車倶楽部のメンバーとCB500や550に乗るバイク乗りが中心の集まりで、中にはそうでないオートバイもあるが、どれも作られてから長い年月を走り抜けたものばかり、みなそれぞれ調子の良い、自慢の、大事にされて来たオートバイばかりで、伊勢原五郎が以前見た事のある車両も多く、その車両のオーナーと話すのは久し振りだった。二週間前に諏訪に一緒に行った足立春男の姿もあった。





両神温泉薬師の湯には、サイドが黒く塗られた紫色のタンクのCB500と、それを整備した石川万路朗のCB750が信州から来て待っていた。紫色のCB500に乗ってやって来たのは、インターネットのブログでは有名な信州のW3乗りで、新田武さんと皆に呼ばれている年配の気の良い男で、石川万路朗の手によって甦ったCB500が今はお気に入りだ。


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