八木和流男はこの日のツーリングに参加する筈だったが、若い頃の悪事が神の怒りに触れ、集まりがある前に必ず天罰を与えられていた、今回の天罰は愛犬による噛み付きの刑で、左手に噛み付かれバイクのクラッチ操作が出
来ず、トミーと一緒にループ橋で一団が来るのをカメラを構えて1時間30分も待っていた、コースが変更になった事など知らずに、寒いループ橋脇の駐車場でトミーと震えていた。

撮影者 やぎおじ
八木和流男の携帯が鳴った、音工房男からだった、今、何処にいるかと聞く音工房男に、寒さに震える唇でループ橋と言うのがやっとだった。
「やぎおじさんがループ橋にいる」500、550乗りに言うと、音工房男はどうするかと答えが分かりきった事を聞いた。
その時伊勢原五郎はミスを犯した。
雨乏晴男、三擦半次郎もループ橋に行くものと思い2台に付いて道の駅大滝からループ橋とは逆に発進した、音工房男は走り去るCB250を唖然と見送った、その脇を集合菅を付けたCB550が五郎を追ってロケットダッシュした、古尾 夏人はCB550の一流の使い手で、国道140を流れるように走りCB250を捕まえ、ループ橋へと踵を返した。
黄色いSRXに乗る歴史的な名所巡りのブログ記事を書く黒井麦酒、恵須子に乗った青井衛守也、自慢のサイドバックを着けたW3の蝉虎良造などのさっきまで一緒に走っていたバイク乗り達は、対向ですれ違う見覚えのある2台に目を疑いながら手を振った。
ループ橋には、八木和流男、トミー、信州へ帰る排気量の違う2台の4気筒、気筒数の違う2台の500、が二人の来るのを待っていた。
撮影者 やぎおじ



排気音のわりに進まないCB250、軽快に走る古尾 夏人のCB550、遅れてきた2台はループ橋を上がって仲間が待つ駐車場に入ってきた、何故かCB250は少し遅れた、八木和流男はそこに来たことを後悔せずに済んだ。

撮影者 やぎおじ
帰りが遅くなることなど忘れ8人は話し込んでいた、時計を見た名栗妾多夫が「もうこんな時間だ」と言うと、慌てて帰り支度を始めた。東御新田武はお気に入りのCB500に跨り、CB750の石川万路朗を従え、日が暮れたループ橋をダートの中津川林道へと向かった。

撮影者 やぎおじ

音工房男、古尾 夏人、名栗妾多夫、伊勢原五郎は、八木和流男、トミーにまた会う約束をして秩父の町に向かった。秩父市街の国道140の交差点で2気筒と4気筒は分かれた、秩父市内での渋滞に疲れた2台の2気筒は芦ヶ久保で休憩を取り、山伏峠を目指した。
山伏峠は外灯が無く真っ暗だった、黄色くぼやけた前照灯を頼りに2台は、暗い曲がりくねった峠道をやり過ごし、名栗の赤信号で一言別れを告げ、名栗妾多夫は右に、伊勢原五郎は朝来た道を戻って行った。
秩父に集まったバイク乗り達は、幸せな気持ちで自宅に無事カエルことが出来た、この様な集まりが成功するには誰かの苦労が必要なことは皆知っていた。
伊勢原五郎は、一日中聞いていたツインのCBサウンドに、若い頃を思い出だした。
帰り道のS字カーブを抜ける時、金と白に塗られたタンクのCBでいつも一緒に走った康之を思った。
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