この物語はフィクションです。 実在の人物、団体などには一切関係ありません、画像はイメージです。
 
 明日退院という日に敏子がやって来た、もう腕に包帯は無くガーゼをテープで止めているだけだっだ、ガーゼを変えながら
 
 「もうオートバイには乗らないの」 と聞いた。
 
 「また乗りたいけど、壊れたから乗るバイクが無いんだ」
 
 「あら残念ね、オートバイが無いんじゃ乗れないはね」
 
 「そのうちバイトで貯めてから買うつもりなんだ、もう少し大きいやつを」
 
 「大きいやつ、それじゃあ二人乗りできるの」

 「そりゃ出来るさ」
 
 「それじゃあ買ったら乗せてくれるかしら」
 
 「バイクに乗りたいんだ、買ったら乗せてあげるよ」
 
 「うれしいは、その時はお願いね」
 
 ガーゼを交換して、敏子は部屋を出て行った。
 
 一週間後、康之は松葉杖を突きながら病院へ来た、診察をして二週間後にギブスを外す事になった、その日の診察室には敏子はいなかった。
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 梅雨が明けた暑い日、康之が乗るCB550は赤信号に止められていた、交差点の向うに敏子の姿を見つけホーンを短く二回鳴らしたが、拍子抜けしたホーンの音は敏子に届かなかった、信号が青に変わると向うをむいて歩いて行く敏子を追い越してCB550を止めた。
 
 「あらっ、久し振り、もうオートバイを買ったの?」
 
 「これは友だちのなんだ、親に見つかったら大変だけどね」
 
 「な~んだ、それじゃまだ乗せてもらえないのね」
 
 「借りればバイクはいくらでも有るからいつでも乗せることは出来るよ」
 
 「それじゃあ今度の水曜日は?、もう夏休みでしょ、私も休みなのどうかしら」
 
  敏子の思いがけない言葉が康之は嬉しかった。
 
 「いいよ、バイクは借りるから、水曜日は大丈夫」
 
 待ち合わせの約束をしてその日は分かれ、その足で水曜日に借りられるバイクを探した。