この物語はフィクションです。 実在の人物、団体などには一切関係ありません、画像はイメージです。
 
  冷やし中華を食べ終って、やる事も無くテレビを見ているとき、夜勤明けの敏子は眠そうに見えたが、何かを考えている様にも見えた。
 
 思い出したかのように康之に向かって言った。
 
 「オートバイってもっと涼しいのかと思った、太陽がもろだから暑いのね」
 
 「そうそう、太陽がもろ襲いかかるから」
 
 「信号待ちは、地獄だったは」
 
 「夕方は気持ちがいいよ、太陽がいないから」
 
 「それじゃあ夕方になるまで時間を潰さなくちゃいけないはね」
 
 「大仏は近いの?」
 
 「直ぐそこ、バイクで10分かな」
 
 大仏を見たいと敏子が言うので二人はバイクで走り出した。
 
 大仏の駐車場は修学旅行の観光バスで込んでいた。
 
 「バイクはこっち、こっち、ここに置いて」
 
 駐車場の係員が手招きしていた、言われるままにバイクを置くと
 
 「バイクは300円ね」 と係員は言った。
 
 シートを開けホルダーにヘルメットを掛けている間に駐車料金は敏子が払い、二人は歩いて大仏を見に行った。
 
 拝観料を敏子が払い二人は大仏の下まで歩いた、真夏の太陽に照らされた大仏から陽炎がたっていた。
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 「暑いのに、大仏様も大変ね」
 
 悪戯をした時の子供のような笑顔で敏子は言った。
 
 「昔は奈良の大仏みたいに、大仏殿の中にいたらしいよ」
 
 「そうなの、よく知ってるわね」
 
 「さっきガイドが話しているのを聞いたから」
 
 「そーいうことか」
 
 次に長谷寺へ行った、木刀やちょんまげの鬘、町娘風の着物、祭と描いた法被などを売っている土産物屋は外人で賑わっていた、浴衣を羽織って写真を撮っている者もいた。
 
 大仏からは海岸線に下り、稲村ヶ崎で青いRD250の隣に350を止め波乗りを見た。
 
 台風のうねりが形よくブレイクしているポイントは上級者達のセッションが始まっていた、陸には沢山のカメラが望遠レンズを構えている、サーフィン雑誌のプロカメラマンもいる様だ、波乗りのプロが何人か入っていて、波に乗るたびに双眼鏡を持った男が名前を呼んでいた。
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写真提供、(株)スターボード   酒井いちろう様
http://starb.cool.ne.jp/
 
 次から次と寄せるうねりが、沖のリーフで持ち上がり一気に立ち上がる、そのうねりにタイミングを合わせサーファー達はパドルを入れ、板が滑り始める瞬間トップの崩れ際からテイクオフをする、その高さは二階の窓から地面を見るのと同じくらいだ。一気にボトムへ向かいスピードに乗せトップに向けターン
トップからまたボトムへ波のリズムに合わせターンを繰り返す、カットバックを入れながら波の斜面を自由に軽快に。
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写真提供、(株)スターボード   酒井いちろう様
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 岸際までライディングしたサーファーがまた沖へと戻る動作も、それが上級者なら見ていて気持ちが良いものだ、正面で崩れ白い力の塊となった波の下へドルフィンスルーを決め、いとも簡単にやり過ごす、その繰り返しでわけなく沖へと戻ることの凄さは、波の力を経験したものにしか解らない。

 
つづく