BGM
 
 
引き潮の波
 
 海岸の後側には崖が有りその崖の上には国道が通っている、崖と海岸の間は崖の上の道が出来るまでは国道だった細い道で、道に沿って集落があった、いくつかの民宿があり夏は海水浴客で賑わう、海水浴客用の駐車場の前に小さなサーフショップを見つけた、ショップといっても看板が出ているわけではなく、WAXありますと書いた紙が入口に張ってあり、中にボードや用品が見えるだけで、波乗り好きのガレージかも知れなかった。
 
 夕方の海はいつもと様子が違った、潮が引いて沖にある岩場が見え、そこから同じ形の波が右と左に繰り返し立って、6人のサーファーが波に乗っていた、彼女は海岸で波乗りを見て、昼間見つけたショップの様な小屋に行ってみた、小屋にいた男は朝浮いていたサーファーだった。 真面目そうな男に彼女は話しかけた。
 
 「此処も波乗りが出来るんですね」
 
 「潮とうねりが合えば波は出ますよ、大潮の引いたときによく出ます、今   朝は良くなかったですが今はいいで すね」
 
 「これはお店なんですか、サーフィンの」
 
 「店といえば店かな、客は知り合いだけですが、今入ってる連中がそうで  すよ」
 
 サーフボードを作るのが男の仕事で隣の小屋が作業場だと教えてくれた。
 
 「波乗りに興味が有るんですか、ここは初心者に丁度いいですよ、ポイン  トが遠いのはきついですが、波は優しいですよ」
  
 「知り合いが少しやっているので興味はあるわ」
 
  「それならやってみるといい、此処でなら楽しいと思いますよ」
 
 「此処でなら楽しいのですか、他所よりも」
 
 「他の浜と違って、ここのポイントは、いつも波がある訳ではないので人が  少ないです、ビギナーは波の質より、人が少ないことが大事ですから、  それに此処の波はビギナー向きです」
     
 「そうね此処は綺麗で気持ち良さそうですものね」
 
 「波に乗りたくなったら此処に来なさい、板は貸してあげますよ、いつでも  歓迎します」
 
  男の言葉にますますこの海岸が気に入った。
 
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つづく
 
 この物語は妄想です。 実在の人物、団体などには一切関係ありません、画像はイメージです。