BGM
危険な国道
彼が通り抜けた旧道が国道と合流する交差点は、右側のすぐ先がブラインドの登り右急カーブ、左側はすぐトンネルでいくら確認しても安心することは出来ない嫌なT字路で、何度も国道を走ったことがある彼もT字路の存在を初めて知った。
T字路の正面は鉄道の石垣で、石垣には擦ったような痕が幾つもありライトの欠片や車の部品の破片が落ちていた。
右側のカーブから現れた車が左側のトンネルに入り、左側からは車が来ないと思われ、交差点から右に発進した、それと同時に左のトンネルからオートバイが現れ、ヘッドライトを点けずに速い速度でトンネルから出てきたオートバイは、CB550の右側を通り過ぎ右急カーブを登って行った。
交差点からすぐの右急カーブを登り切り、次の左カーブを抜けると国道は直線になる、トンネルから現れたオートバイは100mほど先に見え、他には対向車線に観光バスが走ってくるだけだった。
その観光バスの後に、サーキットを走るスリップストリームの真似をして、ボンネットに黒いラインが2本入った黄色いクーペが貼りついていた。

彼も、前を行くオートバイのライダーも、左ハンドルのクーペのドライバーも、観光バスで出来た死角に居るお互いが見えていなかった。
5.7L V8エンジンのパワーを自分の力と勘違いしているクーペのドライバーは、観光バスを追い越そうとアクセルペダルを踏みながらセンターラインを右に割った、車体に書いてある文字が読めるほど近付いた観光バスの後から、黄色いクーペがオートバイの正面に出た、彼はフルブレーキで550を止めた、前を行くオートバイは後輪が右に流れ横向きになりながらクーペに跳ね飛ばされた。
オートバイは、クーペのグリルを壊しライダーは、ヘルメットでフロントガラスを割りルーフを転がって、クーペの向こう側に落ちた。
現場付近に公衆電話は無く、彼が、公衆電話を見つけて事故の通報をしたのは10分後だった、それから救急車の到着に40分、意識の無いライダーが病院に収容されたのは、さらに30分後だった。
意識の無いライダーの点滴を交換した看護婦は、患者の顔を見ていた、若いバイク乗りが運ばれてくると、知っている顔で無いことをいつも祈っていた。
つづく
この物語は妄想です。 実在の人物、団体などには一切関係ありません。画像はイメージです。
この物語は妄想です。 実在の人物、団体などには一切関係ありません。画像はイメージです。
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