BGM
 
 
 
 
駐車場の男

   彼と彼女は砂浜に並んで座り、久し振りの言葉を交わした。
 
 「ここで会うなんて、とても素敵だわ」
 
 「先週バイクで通り掛かってここを見つけたんだ」
 
 「あら、私もオートバイでここを見つけたのよ」
 
 「あのRD250で、ここへ来たんだ」
 
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 「そうあのヤマハで、旅行みたいなものに出たときここへ来たのよ、その   時ここが綺麗で静かで気に入ったのよ、アナタとはあの日以来だから   何年かしら、あの寒い日から」
 
 「三年、正確には二年と五ヵ月」
 
 「同僚に貸していた専門書を返してもらいに行ったとき、アナタに会ったの  よ、あの日は寒かったわ、アナタ、私のことを同僚に聞いていたらしい   わね」 悪戯をした時の子供のような笑顔で言った。
 
 「うん、探した、どう探せばいいか分からないけど、とにかく探した」
 
 「3年かぁ、悔しかったり、悲しかったり、あの頃はいろんな事が有ってね   あの夏の日は今でも覚えているわ、あの日から少しずつ変わったの    よ、私」
 
 彼が車を置いた駐車場から、男が彼女の名前を呼んだ、彼女は立ち上がり男に向かって手を振ってからボードを持って歩き出した。
 
 彼も立ち上がり彼女を追って歩き出した、右手に持つボードが重たく感じた。
 
 駐車場の端にある蛇口に繋がったホースで、男は彼女に水をかけ、彼女はシャワー代わりに髪を洗い、ウエットスーツの首口にホースの先端を入れて、中に水を溜め、男が背中のファスナーを開け彼女はウエットスーツを脱いだ、ウエットスーツの中にはスマートな体に水泳選手が着るのと同じ水着を着ていて、男から渡されたタオルで髪を拭きながら、駐車場の向こう側の小屋に入っていった。
 
 
 
つづく
 
 この物語は妄想です。 実在の人物、団体などには一切関係ありません。画像はイメージです。