BGM
彼がいる幸せ
彼は休みの度にそのポイントに通った、波のある日は彼女が休みなら一緒に波に乗り、波が無ければCB550で走った、2台のCB550で海沿いの国道を走り、山間の県道で半島の先端を一周するのがお気に入りだった。
いつも最後に「さんま寿し」を買って、彼女のアパートで一緒に食べ、次の日の朝早く帰った。
彼が休みの日に最初にする事は、彼女が世話になっているシェーパーに電話をして、波の様子を確認することで、その日は、波は出そうも無いと聞きCB550で出かけて来た、世話になっているお礼に、手土産を持ってシェーパーをたずねると作業場に姿は見えず、机の上に置いた土産に礼の言葉を書いたメモを添えた。
彼女は仕事で病院に来ていた。
彼はCB550で、半島先端に近い弓形に広がる砂浜を見に行って、昼休みには病院に戻り正面玄関で彼女を待った。

彼と彼女の仲は病院の誰もが知っていた。
病院から出てくるなり「飯塚さんが怪我をしたと」彼女は言った。
「暫く仕事は無理みたい、怪我と言っても腰を痛めたのよ、前から椎間板 に問題があったのよ」
「そりゃ大変だ」
「たぶん手術をするようだわ、2ヶ月は入院かなぁ」
「そりゃ大変だ」
「注文の板を作らなきゃいけないらしいの、一人でやってたから休めない のよね」
「そりゃ大変だ」
「プロが大会で使うボードらしいのよ」
「そりゃ大変だ」
「なによ、さっきからそりゃ大変だ、ばっかりじゃない」
悪戯をした時の子供のような笑顔で言った。
彼は彼女と一緒に飯塚さんを見舞いに入った、飯塚さんはべッドに座っていた。
「調子はどうですか」
「こうして大人しくしていれば痛みはすくないんだけどねぇ、動くと苦しい ね」
「作らなきゃいけない板があるんですって」 彼が聞いた。
つづく
この物語は妄想です。 実在の人物、団体などには一切関係ありません。画像はイメージです。
この物語は妄想です。 実在の人物、団体などには一切関係ありません。画像はイメージです。
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