梅雨が明け、暑い日が続きうんざりしていた、朝早いというのに、セパレートの革のライダースーツの内側は、汗で濡れ始めた、赤いオートバイのエンジンをセルモーターでかけ、暖気もそこそこに赤いヘルメットを被り顎紐を締め、パンチングレザーのグラブをはめると、すぐさま発進した。
 
 
 あまりの暑さにジャケットのジッパーを、胸の膨らみの真ん中まで下ろし、胸元に風を入れながら走った。
 
 低い太陽の陽射しが背中に当り、自分の影を踏みながら走るのは、良い気分では無かった、バックミラーは、眩しく太陽を時々写した。
 
 西田佳子は約束の山中湖へ向かって、赤いオートバイで国道246を西に走った。
 
つづく
 
待望?の新作!
 
風は佇まない(続、風が吹いてきた)