赤いオートバイと四気筒のオートバイは、朝霧高原を直線に走り、途中で普段見るよりやせた感じの富士山をバックに、沖野はブログ用の写真を撮った、一面に茂った牧草の上を風が通り過ぎ、揺れる牧草は波のようだった。
沖野は富士宮やきそばが好物だった。佳子は富士宮やきそばが初めてだった、肉かすと削り粉があまり好きにはなれなかった。
一番暑い時間の、日陰が少ない表富士周遊道路を登り、五合目へ続く道へ曲がった、その道は何年か前まで有料で交差点に料金所のゲートがそのまま残されていた。
快晴で暑かった道も、登るにつれて雲の中に入った、気温はどんどん下がり、風が強く、五合目の温度計は夏だというのに七度だった、景色は全く見えずシールドは水滴で見難かった。
「雲の上に出て、雲海が見えるかと思ったけど、ここは雲の中だ、寒いから早く下りよう」
「そうね寒いは、真夏なのに信じられない、手が悴んじゃった」
「さっき下から見たときは、雲なんて無かったのに、ここの天気は気まぐれだ」
寒さに震えながら視界の悪い道を下り、表富士周遊道路に戻ると夏の日差しが二人を照らした。
「冬から夏に戻ってきた、今の道には春が有ったっのかなぁ」
沖野と佳子は水ヶ塚のパーキングで、二度目のコーヒーを沸かして飲んだ。
つづく
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