黄色や紅に色付いた落ち葉が、アスファルト舗装された林道に広がって、コメツガの細く白い葉が忙しく回転しながら舞っていた。
 
 暑い盛りに来た時に比べ辺りは明るかった、「秋になるとこの道は車が多くて走り難くなる」 沖野が言っていた通りだった、何台もの対向車とすれ違い、妙にゆっくり走る軽トラックにイライラした、路肩におかしな向きで停めてある車のナンバーは遠くから来た車両が多かった。
 
 長靴を履いた中年女性が脇の木陰から飛び出し、佳子は思わずブレーキをかけた、中年女性の持つ竹篭には鮮やかなオレンジ色の大きな茸が入っていた。佳子のブレーキの原因が自分である事などお構いなしにまた森の中へと入っていった。
 
 佳子は高台で朝霧高原の景色を見て、夏に曲った道を思い出しながら走った、憶えのある交差点を左に曲ると、走った事のある別荘地だった。
 
 別荘地を抜け国道に出ると、樹海の中もカラフルな木の葉が、柔らかい陽射しを反射させ暗さは感じなかった、夏に通り過ぎた精進湖へと曲り湖畔を走った、風が無い精進湖の湖面に逆さ富士が映っていた。
 
 陽射しは勢いが無くなり、空は青から紅に変ろうとしていた、佳子は精進湖を後に西湖へと向かった。
 
 
 
つづく