高度が上がるにつれ霧が深くなり、風も冷たくなった。

 傾斜のきつい峠道を四気筒のパワーを使いグングン高度を上げていく、バックミラーに排気量の違う四気筒が映っていた。

 快晴の日でも霧がかかることで有名な三国峠は、梅雨時の曇り空では景色は望めない、走れる視界があるだけでも有り難い。ピークを越え晴れていれば見える富士山に思いをはせて霧の中を下る。目の前の薄いベールが外れぼんやりと湖が見えてくる、カーブの手前でアクセルをオフにした瞬間、鶯や不如帰の鳴声がヘルメットの中に入ってきた。

 霧に頭を抑えられた景色の山中湖を見るのは久し振りだった、バックミラーに映っていたナナハンが隣に停まっていた。不如帰の鳴声がまた聞こえた。
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 道志道へと走り出したバックミラーに、自分の四気筒が映っている、ナナハンは昔の記憶のオートバイよりずっと走りやすい、今までのナナハンの記憶は他のオートバイの記憶だったようだ。

 道の駅どうしに着いたのは売店が閉店間近の時間だった、クレソンはすでに売り切れだった。
 
 道の駅から走り出したCB550のバックミラーにはCB750K2が映っていた、何度見ても赤いフルフェイスは映らなかった。