駿河湾に突き出た岬の中に淡水の池があり、鯰や鯉が泳いでいた。立派な神社があり、大きな盆栽といったビャクシンが見事だった、大瀬崎をひと回り歩いて駐車場へ戻ると後ろから呼ぶ声がした。
 
「敏彦!今日もバイクかよ」
 
耳慣れた声に振り向くと、ウエットスーツ着た風間岳夫が手を振っていた。
 
「ダイビングを始めたのかよ、お前は海が好きだからな、それにしてもこんな場所で逢うとはな」
 
「大学のダイビングサークルに特別参加さ、ダイビングは今日が初めてなんだ、面白れーぞ海の中は、魚になった気分だ」
 
「ワイワイ賑やかで楽しそうじゃねーかサークルは、お前もあと半年で卒業か、いろいろやるのは今のうちだな」
 
「森泉さん?ですよね、いつも風間さんからお話しは聞いてるの、高校からのお友達だって」
 
 風間岳夫の脇に歩いてきた、ポニーテールの女の子が敏彦に声を掛けた。 
 
「那美っていうんだ、青井那美、今日のダイビングは那美に誘われてついて来たんだ」
 
「あおいなみ、海にはピッタリの名前だな、雰囲気も海が似合ってる」
 
「これからどちらへ?」
 
「これから駿河湾沿いに西伊豆を南へ、それから東伊豆を北へ、伊豆半島を左回りに海沿いを走る、ここへは伊豆七不思議の一つを見に寄ったんだ」
 
「ホントだ、同じ形だ、タンクのデザインが違うだけなのね、風間さんのオートバイとそっくり」 敏彦のバイクをみて那美が言った。
 
「よく似てるけど、乗ってみりゃ分かるが走りはぜんぜん違うんだぜ、こっちの方が面白れーよ」 敏彦はセルモーターでエンジンをかけ一吹かしすると那美に向かって言った。
 
 森泉敏彦は県道への登り坂を上がり、きつく右に曲ると県道17号を南へ向かった。県道17号線で戸田、土肥からは国道136号線で宇久須、堂ヶ島、松崎から県道15号線で婆沙羅峠を越え、下田からは国道135号線で一気に伊豆半島を走りきった、松崎と河津で止まっただけだった。