続・少年の夏-1

防波堤から見る景色は三十年前と殆ど変わらなかった、砂浜は狭くなっていたが海の色は昔のままだ。
「やっぱりチャックだ」 肩越しに声が聞こえた。
「おう」 チャックは振り向き、声の主に笑顔を投げた。
「まだオートバイに乗ってるのか、それも昔のままじゃねーか」 陽介は覗き込むように四気筒のエンジンを見ていた。
「おう、今日買ったんだ、買った日に此処へ来た、でもコケなかったぜ」
「そーだそーだ、あん時も買った日だったよな、今日はあそこに砂は無かったか」 陽介は大きく笑った。
「さっき見かけたんだよそのブーツ、まさかとは思ったけど、そーだったよ」
「街中を走ってそれからここへ来たからな、そん時見られたか、陽介の店の前も走ったからな」
「チャックならここへ来るはずだからな、だから来てみた、あれから何年だ、何年経った」
「街を出てから三十年だ、長いような短いような時間の感覚は無かったよ、顔だけが歳をとった」
「みんな見た目はすっかり中年だ、あんときの仲間でバイクに乗ってるやつはチャックだけじゃねーかな」
「何人街に残ってるんだ」
「同級生は五十人ぐらい居るぜ、今夜は百人ぐらい集まる」
「百人か学年の半分か」
「いままでもハガキは行っただろう、返事もよこしゃしねーでよ」
「ハガキは来てたよ、なんだか面倒でよ、ワイワイやるガラじゃねーからよ」
「今夜はどこに泊まんだよ」
「暖ったけーし今夜は野宿かな、昔みてーに」
「チャックらしいや、配達の途中だから行くよ、じゃあ後で七時に会館でな」
陽介は魚善と書いた軽トラックで走りだした。
つづく

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