続・少年の夏ー最終回
「このオートバイは色が違うけど、良く似てるわ、あの時のオートバイなの」
「いや違う、今日買って乗ってきた、同じ排気量、同じ形だけど、あれとは違う」
「ずっとオートバイに乗ってたわけでは無いのね」
「オートバイに乗るなんて考えてもみなかった、でも突然乗りたくなった、乗りたくなったら我慢が出来なくて、これを見つけたら欲しくて我慢が出来なかったよ、理由は分からないけど、若い血がまだ残っていたのかな」
二人は防波堤に並んで座り、月明かりで輝く細波を見ながら話を続けた。
結婚してから旦那の仕事の関係で住まいが何度も変わった事、だから日本中に友達が居ること、子供の転校で大変だったこと、今は隣の県に住んでいる事、そんなことを正代は話した。
大きくは無いが幸せだと、毎日やることが有って充実していると、テニスは今でも続けていると言っていた。
明日も仕事があるので今夜帰らなければならないと、それで車で来て、帰る前に懐かしい場所へ寄ったと言った。
「いつかその少女に会ったら、青山君のことを伝えておくね」
正代はペットボトルのミネラルウォーターをひとくち飲んだ。
「それじゃあ、今度ここへ来る時はヘルメットを二つ持ってくるよ」
ハッチバックのテールランプが見えなくなるまで見送り、チャックは防波堤に横になった。
朝日の眩しさでチャックは目を覚ました、防波堤の上に緑色の瓶と、赤いアルファベットと山のイラストが描かれた飲みかけのペットボトルが並んで立っていた。
二つの水は同じ河を流れるだろうか、流れ着く海は同じだろうか、チャックは考えた。
おしまい。

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