右に野球場の照明が煌々と輝き、左には濃いグレーの空の下に、山並みが黒々とシルエットになって、一番高い頂の上に宵の明星が一際明るく輝いていた、本格的な夜になる少し前の県道を、直立二気筒624ccのエンジンを積んだオートバイで北へ走る、オレンジ色のナトリウム灯に照らされたS字カーブを曲がると、県道は小さな川を跨ぐ、その先の集落を抜けると、連続して現れるカーブは街灯に照らされ、その光はガソリンタンクの上を後方へ流れた、右に左に気持ちの良い速度でカーブをこなす、右手でコントロールするアクセルに反応して、路面と水平に延びるマフラーが吐き出す排気音は、このオートバイの最大の魅力だ、上り坂のカーブをアクセルいっぱいに開け、走り抜ける排気音は魅力的だ、だがシートの上では聞こえないのが一番残念だ。その先の峠は街灯が無い、峠の頂上まではヘッドライトが照らし出す範囲だけが全てだ、カーブで視線を向ける場所を、ヘッドライトの明かりが追いかけ、路面の情報は遅れて視覚に入る、何度も走ったことが有る峠道だが緊張する、峠を登り切るとダム湖の渕を走る、気温が下がりジャケットの隙から入る風が冷たくなった。
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