伊勢原CB

Yahooブログから引っ越しました、「あの頃の未来」伊勢原CBです、Yブログで知り合った方が訪問の際には、メッセージで貴殿のURL等をご連絡いただけますと幸いです。

    小さな作文

     
    ソフトクリームは恋の味-3
     
     
     案内標識の度に交差点を曲がり三台は河口湖の湖畔へ出た、時計回りに湖畔を走ると西湖への案内看板が有った、案内看板の交差点を左に曲がり登り切るとトンネルに入った、トンネルの中で健一が「あ」っと大声を出した、声はトンネルの中の冷たい空気を震わせトンネル中に響いた、三人は次々に奇声をあげ空ぶかしを何度もやった。トンネルを抜けると西湖だった。
     
     西湖で先頭は久夫に代わった、湖畔を半周走り国道139号に出た、青木ヶ原の樹海の中を直線に走り、信号のある交差点を右に曲がると標識通り精進湖が有った。
     
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     精進湖の湖畔を走る道は、だんだんと細くなり、すれ違いの出来ないトンネルには信号機が付いていた、三台はトンネル入口の赤信号で止められた、トンネルからアメリカ製のオートバイが一台出てきた、ライダーは三人へ向けてピースサインを出した、三人はいつもの様にピースサインを返した、信号が青になるとトンネルを抜け、右折すると再び国道139号に出た。
     
     先頭の義昭は前を走る観光バスに苛付いていた、観光バスが右にウインカーを出した時、追い越すことばかり考えていた義昭はバスの左に付いた、曲り始めたバスを左から抜き、樹海の中を上る左カーブをアクセルを開け駆け上がった、バスが曲った交差点が本栖湖への交差点だった。
     
     一番後ろを走っていた健一は、本栖湖入口を通り過ぎたことに気が付いて前の二台に知らせようと速度を上げた、先頭に出た健一の速度に合わせ久夫と義昭も速度を上げた、久夫はギヤを一段下ろしフルにアクセルを開け先頭に出ると二台を引き離しにかかった、その動きに合わせ二台も加速した、三台はレースのように走り富士宮道路の料金所が見える場所まで来た、久夫と義昭も本栖湖を通り過ぎたことに気が付いた。
     
     「朝霧高原だなここは」
     
     「さっきの信号が本栖の入口だったんだぜ」
     
     「今の道は面白かったな、やっぱり350は速えぇなぁ」
     
     三人はバイクを左に寄せいつも見ているより痩せて見える富士山を見上げた。
     
     「本栖湖でなんか食うか、はら減っただろ」
     
     「そーするか」
     
     
    つづく

     
     
    ソフトクリームは恋の味-2
     
     ツーリングへ行こう、それだけで何処に行くかは決めていなかった、先頭を交代しながら先頭のオートバイについて走ってここまで来た、いま先頭を走るのは久夫だった、三人とも自分の運転でこの道を走るのは初めてだった。
     
     富士急ハイランドの入口を過ぎ久夫はバイクを左に寄せた、右手で合図をして先頭の交代を促した、左手で合図をして健一の350が先頭に出た、国道をそのまま走り紅葉台の看板を見た時、小学校の遠足で来た事があるのを健一は思い出した、健一は右にウィンカーを出した、三台のオートバイは未舗装の道へ入った、広くない未舗装の道が紅葉台への道だった。
     
     
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     紅葉台の展望台からは青木ヶ原の樹海が見渡せた、緑色の海の向うに富士山がニョキっと生えていた、雪の無い富士山は赤っぽく見えた、西湖の湖面は平らな窪地に見えた。
     
     「あの湖へ行こう」義昭が言った。
     
     「あれは西湖だよな」
     
     「おう、そうだきっと西湖だ、きょうは富士五湖巡りをやるか」
     
     「さっき山中湖は通ったぞ」
     
     「河口湖は西湖から行けるはずだ、確か西湖と河口湖は繋がってるんじゃなかったっけ」
     
     「山中湖、河口湖、西湖、後はどこだよ」
     
     「後は、精進湖と本栖湖だ、本栖湖からは朝霧高原に行けるぞ」健一が地図を見ながら言った。
     
     「決まりだな、富士五湖だ」義昭は健一の肩越しに地図を見ながら言った。
     
     未舗装の道を下り、先頭の義昭は左にウィンカーを出した。
     
     「おい、右じゃねーのかよ西湖は」久夫が怒鳴った
     
     「河口湖から西湖にまわる」
     
     「そーか判った」三台は左に曲った。
     
     
    つづく

     
     久しぶりに作文です
     
    駄作ですよ、駄作
     
    読みたい方だけ読んでくださいな。
     
     
    ソフトクリームは恋の味
     
     
      心に響く音がある、忘れられない音がある、過去が拡がる音がある。

     35年も物置きに入っていたCB250は、一通りの整備が終わり新品のバッテリーを乗せた、ガソリンコックをオンにして、キックペダルを踏み下ろすと呆気なくエンジンはかかった。 
     
     アクセルを開けると昔の音がした。
     
     耳の奥に残っていた音が湧き出した、あの頃の思い出が頭の中のスクリーンに映し出された。
     
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     高校二年の夏休み、健一は親に買ってもらった中古の金色CB350K2で、義昭はアルバイトで買った赤いCB250K3で、久夫は兄の紺色のCB350K1で山中湖の湖畔を走っていた。
     
     真上から照らす太陽が、三台の影を黒いアスファルトに更に黒く焼付けていた。Tシャツで走る三人の腕は日に焼けて真っ赤になっていた。
     
    つづく
     

     バックミラーに映るライトが、カーブを曲る度に近付いてきた、走り屋の四輪だろうと思った、道志道の昔からの狭いカーブが続く場所に入ると、あきらかに後ろから迫る四輪は速かった、左カーブの手前に広い場所を見つけ、四気筒498ccのオートバイを左に寄せた、短く二度クラクションを鳴らし白い四輪はパスした、その四輪のすぐ後ろにもう一台白いセダンがいた、セダンは短いクラクションを鳴らすと同じようにパスした、 GT-FOUR RCだった排気音からノーマルでは無い事は直ぐに分かった、低くない車高、ロールしない車体、ラリー仕様なのだろう、今では全線アスファルト舗装のこの道も、34年前は砂利道で細く絶好のラリーコースだった、B210で砂利道を飛ばした当時を思い出しながら、最高地点の看板を通り過ぎた。
     
     寒いだろうと長袖にベスト、上着は革ジャンを着込んで汗を掻きながら走り出したが、両国橋を渡る頃には丁度良い格好だった、山伏峠の温度計は17度だった、森の香りを吸い込みながら直線の下りを、ヘッドライトを頼りに山中湖へと誰にも邪魔されず下った、山中湖に近付くと、大学の運動部の連中だろう車の通らない国道を、我がもの顔で広がって歩いていた、酒に酔っているのだろうバイクなど目に入らないらしい、ライダーが気を付けて切り抜けるしかなかった。
     
     三国峠への登りが始まる直線も夏独特の雰囲気が漂っていた、四気筒をゆっくりと走らせ、カーブを登って行くと景色が開ける、右カーブの外側にある広場は満車だった、朝焼けの富士山の写真を狙うカメラマニアだろう、その先も車を置ける路肩は空きが無かった、双眼鏡で星空を見上げる親子がいた。
     
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     バイクを置く場所を探して一度頂上まで走り、頂上でUターンしてススキの茂る路肩にCB500を停めた、半円に続く山中湖畔の灯りの左に、上に伸びるハの字型の灯りの繋がりが見えた、御来光を目当ての富士山登山の灯りの列だ、小さな光が煌きながら動いていた。
     
     アスファルトに横になって星空を見た、昼間の太陽に照らされ熱くなったアスファルトはまだ温かかった、見上げる空にぼんやりと白い帯が北から南へ伸びていた、天の川だ、今夜は天の川を見るためにここまで来た、新月の夜を待っていた、今夜がその日だった。
     
     瞬間の光の糸、はっきりと見える光の流れ、三つの流れ星を見る事が出来た。三十分道路に寝転がっていたが車は一台も通らなかった。三国峠を小山側に下りて、国道246号線に出るまで対向車は無かった、大型の後ろを走り何度も赤信号に止められ、家に帰り着いたのは日付が変わる5分前だった。
     
     

     

     
    続・少年の夏ー最終回
     
     
     「このオートバイは色が違うけど、良く似てるわ、あの時のオートバイなの」
     
     「いや違う、今日買って乗ってきた、同じ排気量、同じ形だけど、あれとは違う」
     
     「ずっとオートバイに乗ってたわけでは無いのね」
     
     「オートバイに乗るなんて考えてもみなかった、でも突然乗りたくなった、乗りたくなったら我慢が出来なくて、これを見つけたら欲しくて我慢が出来なかったよ、理由は分からないけど、若い血がまだ残っていたのかな」
     
     二人は防波堤に並んで座り、月明かりで輝く細波を見ながら話を続けた。
     
     結婚してから旦那の仕事の関係で住まいが何度も変わった事、だから日本中に友達が居ること、子供の転校で大変だったこと、今は隣の県に住んでいる事、そんなことを正代は話した。
     
     大きくは無いが幸せだと、毎日やることが有って充実していると、テニスは今でも続けていると言っていた。
     
     明日も仕事があるので今夜帰らなければならないと、それで車で来て、帰る前に懐かしい場所へ寄ったと言った。
     
     「いつかその少女に会ったら、青山君のことを伝えておくね」  
     
     正代はペットボトルのミネラルウォーターをひとくち飲んだ。
     
     「それじゃあ、今度ここへ来る時はヘルメットを二つ持ってくるよ」
     
     ハッチバックのテールランプが見えなくなるまで見送り、チャックは防波堤に横になった。
     
     
     朝日の眩しさでチャックは目を覚ました、防波堤の上に緑色の瓶と、赤いアルファベットと山のイラストが描かれた飲みかけのペットボトルが並んで立っていた。
     
     
     二つの水は同じ河を流れるだろうか、流れ着く海は同じだろうか、チャックは考えた。
     
    おしまい。
     
     
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